「バタフライ・エフェクト」★★★(5段階評価です)

公式HP:http://www.butterflyeffect.jp/

 幼い頃から、時折記憶喪失の経験のあった少年・エヴァン。精神科医は日記をつけることを勧める。そして、大人になりその体験も忘れかけたある日、彼は昔の日記を発見する。日記を読むとタイムスリップし、過去の出来事を変えられることに気づくエヴァン。しかし、日記をきっかけに再会を試みた初恋の人・ケイトは悲劇に見舞われ…。彼はその悲劇を変えようと、再び日記を手にするのだが…。

 超シリアス&悲劇系バックトゥザフューチャー。映画館の大画面&大音量で鑑賞の後、げっそりとシートにくずおれていたのでした。こ、これは…。しょろんにとって、アメリカン・ビューティ以来(id:syoron:20030516)のげっそり映画です。
 もう、過去に手を加えても加えても不幸の大連続。あちらを立てればこちらが立たず。お話が緻密に練られているだけ、その不幸な人生をものすごい密度で追体験させられる感覚になるのでした。うう…これは悪趣味の域。もう少し後味の良いまとめ方もあったろうに…。精神を病んでいく様子とか、ものすごくリアルというか不気味。そして、子供時代の不幸体験を全て詰め込んだかのような人生の数々…。妙に厭世的な気分になってくるのでした。お元気な時にどうぞ。
 主演のアシュトン・クッチャーは、デミ・ムーアの年下BFの印象しかなかった人ですが、演技力あるなぁと思いましたとです。(テンションはヒロシ風)

「シャネル・スタイル」渡辺みどり

シャネル・スタイル (文春文庫)

シャネル・スタイル (文春文庫)

通勤電車での読書用…には、さらりとしていて良いかと思ったのですが、いまいち満足できず…。前半でシャネルの功績と人生をまとめ、後半にはシャネル語録があるのだが、特に語録は、いつ、どんな文脈で言われたものかが示されていないので、解釈しづらい! また、著者自身の人生におけるエピソードも時に絡めて書いてあるのだが、それは全くなしにするか、あるいはもっと自分に引き寄せて書くか、いずれかでないと気が散ると思った。資料なのか、自分語りなのか白黒はっきり付けたいのです。

「エターナル・サンシャイン」★★★(5段階評価です)

 特定の記憶だけを消すことのできる治療で、恋人・クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)が自分の記憶を消してしまったと知るジョエル(ジム・キャリー)。彼もまた、クレメンタインの記憶を消そうとクリニックを訪れるのだが…。

 えーと。ジム・キャリーが、普通の、むしろ根暗な男性を演じられていることに驚く(笑)。主人公ジョエルは、男のダメな部分をめいっぱい詰め込んだような男。コンプレックスのせいか、恋人と言い争うと相手をやけに性的に中傷したりとか(生々しい!)、”結婚”などの責任感を問われる部分には踏み込めなかったりとか。で、その割に妙に未練がましかったりとか。お腹いっぱいになるくらいのダメ男ぶりを、ジム・キャリーが静かに演じていて新鮮だったのです。
 クレメンタイン役のケイト・ウィンスレットも、「タイタニック」の時には、深窓の令嬢というには骨太(失礼!)なのが気になったが、”飛んでる”系の役にはハマります。
 お話は、記憶を除去するためにクリニックを訪れたジョエルが、記憶除去の治療中に段々と意識が混濁していく部分は引き込まれて面白かった。恋愛の楽しい部分も悲惨な部分もなぞりながら、最後には”相手のことが純粋に好きなのだ”という根本に立ち返っていく。…と来て、ラストはちょっとクズつく! のが残念なのですが。
 あと1点、これまで数々の雑誌グラビア&スパイダーマン2で見かけてきて、”イマイチ!”感の拭えなかった、キルステン・ダンストが今回は良かった! 記憶除去クリニックの、いわくありげな受付嬢という役どころ。雑誌のような静止画ではなく動画、王道ヒロインではなく、”ニュアンスで見せる”役だと、表情の作り方、声の出し方等等、新しい魅力があるなぁと思ったのです。センス良いんですよ。ソフィア・コッポラのお気に入りだというのも納得。
 

「ディープ・ブルー」★★★★(5段階評価です)

海に浮かぶ研究所で、実験のため脳を肥大化され飼育されているサメたち。最小限のスタッフしかいない暴風雨の夜、サメたちの逆襲が始まり…。

典型的だからこそ痛快なハリウッド・パニック・ムービー。
もう、オープニングからあまりに教科書的な「イチャつくカップルに忍び寄るサメ」シーンに笑ってしまう。ハリウッド映画そのもの、教科書をなぞるようなわかりやすい展開なのです。病気を治したい余り、禁を破ってDNA実験に走る女性科学者、とか、過去のある謎めいた男、とか、登場人物の造詣もとってもわかりやすい。でもそれが、逆に安定感となって楽しめるのです。定型=人々にウケ続けてきた面白みの集積、と言えるわけで、わかりやすさを突っ込みつつも、ハラハラドキドキでした。話の運びに無駄がないと同時に、ほどよく定型から外す部分もあって飽きないのです。
頭を使わずスリルを満喫したい時には、とってもオススメかと思います。

「スター・レッド」萩尾望都

スター・レッド (小学館文庫)

スター・レッド (小学館文庫)

引越し準備で忙しい中、古本屋で買ったカバーなしの文庫をふと手に取り、捨てようか迷い、中を見…読みふける!
もう、無茶苦茶面白い。なんというスケールの大きさ。
二十歳そこそこで読んだ時には、「ポーの一族」や「トーマの心臓」に比べて、それほどピンとこなかった記憶があるのだけど、この世界や自分という存在の不思議さ、愛情や孤独などを思って、胸の痛くなる名作でした。そして「SFのなんたるか」が、少しわかった気がしたのです。自分自身がちょっと大人になったかも、とも思いつつ…。
少女漫画バリバリで育ったせいか、しょろん、どうしても作品を読むときには、登場人物に感情移入するクセがあります。萩尾作品で言うなら、「ポーの一族」のアランが死んだとき、全国の愛読者たちがお葬式をしたというエピソードがありますが、その系譜に連なる心理があるのです。つまり、登場人物に執着するあまり、彼らに対する”あまりに不条理な”扱いを受け入れられないのです。重要な登場人物があっさり死んでしまったり、サブキャラがたまたま最後に重要なポジションに就いたりとか、もう、ダメ。最初にこの作品を読んだ時、あまり印象に残らなかったのは、おそらくこの点がミソだろうと思ったのでした。この作品は、人物の造詣に重きを置く少女漫画、というよりは、世界観を重視するバリバリのSFなのですもの。
 しかし、数年を経て読んでみると、実に実にお話が、自分の中にまっすぐ入って来たのです。これは、自分と周囲との距離の取り方が少しは成熟した証なのかしら、と思ったことでした。そして、SF面白いですよ。まだ読んでいない萩尾SF作品、是非挑戦したいのです。もちろん、カバーなし文庫は捨てることなくキープ。
 

心機一転。

 ようやく仕事がひと区切りついたかと思えば、慌しく引越したりと落ち着きのない日々なのです。しかし、理想の暮らし方目指して前進あるのみ。無駄に時間を過ごすまいと決意している最近、この気合が持続するうちアレコレ片付けねば。

 そろそろ平穏な暮らしが手に入るかと思いきや、祝福されているかの如く仕事が。福音の鐘にしては、重い響きの音がするのです。コンビニ惣菜に飽きて、ゴーヤをまっぷたつにしたある夜のこと。一瞬、眼がどうかしたかと思いました。種が”赤い”…! 
 熟したゴーヤの種は、鮮やかな赤なのだそうです。