「スター・レッド」萩尾望都

スター・レッド (小学館文庫)

スター・レッド (小学館文庫)

引越し準備で忙しい中、古本屋で買ったカバーなしの文庫をふと手に取り、捨てようか迷い、中を見…読みふける!
もう、無茶苦茶面白い。なんというスケールの大きさ。
二十歳そこそこで読んだ時には、「ポーの一族」や「トーマの心臓」に比べて、それほどピンとこなかった記憶があるのだけど、この世界や自分という存在の不思議さ、愛情や孤独などを思って、胸の痛くなる名作でした。そして「SFのなんたるか」が、少しわかった気がしたのです。自分自身がちょっと大人になったかも、とも思いつつ…。
少女漫画バリバリで育ったせいか、しょろん、どうしても作品を読むときには、登場人物に感情移入するクセがあります。萩尾作品で言うなら、「ポーの一族」のアランが死んだとき、全国の愛読者たちがお葬式をしたというエピソードがありますが、その系譜に連なる心理があるのです。つまり、登場人物に執着するあまり、彼らに対する”あまりに不条理な”扱いを受け入れられないのです。重要な登場人物があっさり死んでしまったり、サブキャラがたまたま最後に重要なポジションに就いたりとか、もう、ダメ。最初にこの作品を読んだ時、あまり印象に残らなかったのは、おそらくこの点がミソだろうと思ったのでした。この作品は、人物の造詣に重きを置く少女漫画、というよりは、世界観を重視するバリバリのSFなのですもの。
 しかし、数年を経て読んでみると、実に実にお話が、自分の中にまっすぐ入って来たのです。これは、自分と周囲との距離の取り方が少しは成熟した証なのかしら、と思ったことでした。そして、SF面白いですよ。まだ読んでいない萩尾SF作品、是非挑戦したいのです。もちろん、カバーなし文庫は捨てることなくキープ。