「死ぬまでにしたい10のこと」★★★★(5段階評価です)

死ぬまでにしたい10のこと [DVD]

死ぬまでにしたい10のこと [DVD]

 生まれて始めてキスした男と17で結婚・妊娠・出産、23歳の今は2人の娘と夫と、母親の自宅敷地内に建つトレーラーハウスで暮らすアン。貧しい一方でささやかな幸せも感じつつ、淡々と過ごしていたある日、「ガンで余命は二ヶ月」という宣告を受ける。衝撃を受けるアンだったが、やがて残された時間に自分のするべきことを10項目を書き出し、行動に移す…。

 ペドロ・アルモドバルが製作総指揮を務めた本作品。「トーク・トゥ・ハー」と同じく、こちらも余命宣告という刺激的な設定が、当初受け入れられず鑑賞を見送り。…が。が!
 改めて手にとったらば、実に良い作品なのです。主人公・アンの存在感が実にリアル。考える時間もなく人生を駆け抜けてきて、自分の選べなかった人生…例えば大学に行くとか、もっと色々恋愛したかっただとかへの未練を残しつつも、目の前の娘たちや夫への愛着を持ち、投げやりにもならず毎日を過ごす。…いるいる、こういう人! と感じられる、等身大の主人公なのです。そして、体調を崩し「ひょっとして3人目の妊娠?」という甘い期待をしたところで、非情な宣告がなされるわけなのですが。涙を流したら、後はきちんと腰を据えて残された時間のことを考える。その気丈さ、冷静さにじーんとさせられます。
 アンが作った10項目のリストは、達成したことも達成しなかったこともありつつ、でも本人は悔いなく最後の瞬間を迎えようと行動を続ける。そして、以前はまるで灰色だったアンの時間は輝いていきます。限られた時間だからこそ、ひたむきに悔いなく生きるべきなのだ、そしてそれは、アンだけでなく、人生を送る全ての人がそうするべきなのだ、という強いメッセージが感じられる作品です。