「バッド・エデュケーション」★★★(5段階評価です)

公式HP:http://www.gaga.ne.jp/badeducation/

 1980年、スペイン。若くして成功し、しかし今はスランプに悩む映画監督の元へ、長らく音信不通だった幼馴染が訪ねてくる。彼らには少年時代初恋に落ち、しかし、悲劇的に引き裂かれた過去があった。俳優志望を名乗る幼馴染は、その少年時代をモチーフにしたという脚本を差し出し、自らが演じたいと熱心に申し入れる。印象の代わった彼に疑念を抱きつつも、監督は純粋な愛と欲望に彩られたストーリーに強く惹きつけられ、映画化に向けて動き出すのだが…。

 映画館、ほぼ女性客! というのも、かなり筋金入りの少年愛&同性愛映画なのです。幼馴染役のガエル・ガルシア・ベルナルに、監督役のフェレ・マルチネス、そして彼らの少年時代を演じる男の子たちも、とっても綺麗。更に舞台は神学校とくれば、これはもう完璧(?)なのです。
 ミステリー仕立ての筋書きは、切ないです。自分を破壊してしまうほどの純粋な愛情と、それを踏み台にする登場人物たち。ピュアは実体としては生き残れないのだわと感じさせられた次第です。そして、ある意味一番罪深いのはこの監督であると思う…。監督、享楽主義を標榜しているのです。少年時代、既に神も地獄も信じないようなタブーのない精神の持ち主です。スランプの今は、新聞記事から刺激的・猟奇的な記事ばかりを切り抜いているが、イマイチ自分のものにできていない感じ…それはやはり、ドロドロの葛藤の中に自らを置いてこなかったからなんだろうと思うのです。それが、切実さのある脚本と、謎めいて生命力に溢れた人物の登場をきかっけに、自らを濃い人間関係の中に投げ込み、一方で冷静さを失わずに映画を作り上げて行く…。鬼! この「バッド…」は、監督自身の自伝的作品ということですが、「映画の鬼」とはこういうことを言うのだろう、とも感じさせられたのでした。
 主演のガエルがたいへん魅力的なのです。女装するとジュリア・ロバーツそっくり! 見事に、生命力と野心に溢れ、複雑な内面を持つ人物になりきっていました。どこか人懐こい様子がミソかなぁ。

バッド・エデュケーション (ヴィレッジブックス)

バッド・エデュケーション (ヴィレッジブックス)

↑小説もあるみたい。