「ヘルター・スケルター」 岡崎京子

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 「うたかたの日々」に続き岡崎京子づいてます。友人に「うたかた…」とセットで借りたというシンプルな理由によるのですが。しかしこ、これは名作。唸りました。
 主人公のトップモデル、りりこは実は全身整形手術によって作り上げられている。美と名声を手にするりりこだが、それは人々に消費され飽きられる運命にある虚像。美しい外見も、メンテナンスを怠れば醜く崩れ去ってしまう実に危ういものだ。りりこは望んでそれらを手に入れたものの、いつ落ちるともわからない綱渡りに苦しみ、憤り、例えば周囲の人間をいたぶるといった残虐お遊びで気を紛らわせている。でも、高価な美容液が麻薬のようにすぐ効き目を薄れさせるのと同じく、お遊びだって長続きしない。そして、芸能界には続々と、生まれた時から完璧に美しい人間がやってくる……。
 全てを軽蔑しながら、その裏返しのように自分の地位や美へ執着するりりこが凄まじい。というより、軽蔑と羨望は何かに執着することによって生み出される双生児だと思った。切れた時のりりこのセリフは、あまりにもリアルで痛々しい。人魚姫を思い出してしまいました。王子様の愛を手に入れるため、魔法によって人間の足を手に入れ、代償として針の刺す痛みに耐えながら踊りつづける人魚姫。でも、このりりこという人魚姫は、とうとう痛みに耐えかね破滅を迎える時も、それを潔しとしない。ラストまで一気に駆け抜け、大変な混沌と強靭さを見せてくれる作品でした。すごい。