「砂の界へ」 岸恵子  

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 女優・岸恵子が砂の界、イランとエジプトを旅したルポルタージュ
 演習発表のために嫌々観た映画「雪国」で、岸恵子の初登場シーンから眼が釘付けになったのが大学2年の頃。オードリー・ヘプバーンを初めて観た時と同じくらいのインパクトがありました。その後、彼女が本を出していることを何かで知り、手にとったのが「巴里の空はあかね雲」というエッセイ。そして再び、才気迸るといった文章に眼が釘付けになってしまった。女優が片手間に書いた本という代物ではないのです。今や出ている本は全てチェックしているのだが、これはその最後の一冊。相変わらず文章が素晴らしい。比喩や文章のリズムを駆使して緩急自在に眼にしたこと、考えたことを書いていくのだけど、映像的な描写のせいもあってあっという間に引き込まれて読んでしまう。単なるルポに終わらず、自分史を絡めて描くのは著者独自のスタイルなのだが、それがより迫力を生んでいる。様々に広がった話が結びの一文にキュっと凝縮されて、最後までお見事であります。