「ムツゴロウのどこ吹く風」 畑正憲

 アマゾンへのリンク:ISBN:4267014965
 今回は動物よりも動物王国スタッフや家族、テレビ業界の仕事仲間であるディレクター、アナウンサーといった周囲の人に焦点を当てている。特に「三人のケイコ」と題して、フジアナウンサー(当時)の岩瀬恵子さん、河野景子さん、王国スタッフの恵子さんの3人を、それぞれ鋭い視線で観察しながら描いている章が、その登場人物の意外さも含め印象に残る。悲喜こもごもの人間関係の中に居ながら、それを「どこ吹く風」と渡っていこうとするムツゴロウさん。その観察眼は大層鋭く、その分消耗したりしないかしらと思ったりするのだが処世術もきちんと披露される。王国内の恋愛関係を見かねて訪れたスタッフに「誰かさんと誰かさんが麦畑」という歌をひいて示される哲学は「その人が自分の前からいなくなったらどこで何をしていようといい」(本が手元にないので大意)というもの。目の前にいない人のことをあれこれ想像(詮索)するのは下種である、というのは確かにその通りだわと思ったのでした。ムツゴロウさん流交際術の秘訣がここに。
 ちなみにその麦畑の歌、知らなかったので検索すると

「誰かさんと誰かさんが麦畑/ちゅっちゅちゅっちゅしているいいじゃないか/僕には恋人いないけど/いつかは誰かさんと麦畑」(麦畑)

 元々はスコットランド民謡で、ドリフターズがカバーして一般的になったそう。